タ『恩田ワールドも「あわい」を目指す―夢にたゆたう快感』
本書は、『光の帝国』『夜のピクニック』など
多ジャンルに渡る作品を発表し続ける著者による
待望の短編集。
本書には、著者の小説7編が収録され、
各話の巻頭に仏文学者・杉本秀太郎さんの短歌と
町田久美さん、合田ノブヨさんらの絵が添えられます。
収録されているのは
風呂敷の模様から話が展開するエッセイ調の作品『唐草模様』
あるY字路でおきた不可思議な事件の顛末『Y字路の事件』
類まれなる才能と大いなる運命を背負った少女を描く『窯変・田久保順子』
―など、それぞれ小説のタイプは異なるものの
いずれも、今までの著者の作品と比べても
いっそう「あわい」雰囲気を持った作品ばかり。
個人的に印象深かったのは
川にグレメが上がる夜
それを見に行く少年たちを様子を描いた『夜を遡る』
小説そのものも大好きなのですが
添えられた樋口佳絵さんの作品や短歌も、
まるで本作のために書かれたようにピッタリで
いつまでも楽しんでいたくなりました。
個々の作品のインパクトは強くはないものの
小説、短歌、そして絵画を全体として味わうと
まるで、一陣の風が吹き抜けたような
心地よい余韻が残る本書。
著者の作品を読み続けている方はもちろん
短編小説が好きな方には強くおススメの著作です☆
朝日新聞出版 エ1,575円