タ『日々「勝負」をしている人へ』
現在、最強の棋士である羽生名人が、勝負に勝つための秘訣を、自身のエピソードを交えながら書いてある。それらは将棋の世界のみならず、ビジネスやスポーツなどにも通じるものばかりである。タイトルからは、決断のコツばかりが書いてあるような印象を受けるが、試合前後の気の持ち様や、オフの時の時間の使い方まで、幅広く書かれてある。例えば、「私は、対局が終わったら、その日のうちに勝因、敗因の結論を出す。」(118p)などは、あらゆる分野において心がけるべき姿勢である。
本書は、最良の決断を行う方法ではなく、最良の決断を行える状態でいられる方法を論じている。そういう意味では「決断力」を身につけたいと考えている読者にとっては期待外れかもしれない。しかし、一つの分野で頂点を極めた著者が、どのような考え方や習慣を持って勝負に挑んでいるのかを知ることは、思考や行動の向上を目指す幅広い人々にとって価値があるのではないか。
角川書店 エ720円